2013年 02月 15日
2013.2.15 道新記事 原子力負の遺産 第6部 「論 3.11後の視点-6-」 |
2013.2.15 北海道新聞 朝刊 1面 「論 3・11後の視点 -6-」 より全文掲載
以上、全文掲載。
開沼さんは28歳。私よりも10も若い社会学者の言葉は、核心をついていると思います。
メディアが作りたがる「善と悪」「こちらとあちら」という構図を問い直し、「単純じゃない問題」をめんどくさいといって回避せず、知らん顔せず、すぐに解決出来なくても抱えながら、寄り添いながら、目を背けずに、付き合っていく。
なぜなら、この問題はどこか他所のことではなくて我々自身の内側にあるのだから。
私はそう捉えます。
いま読んでいる本にも開沼さんの文章がありますが、彼の論考をもう少し読んでみたくなりました。
大工・地域住民 齊田綾
福島大 特任研究員 開沼 博氏
なぜ原発が止まらないのか。多くの国民は「戦争、ない方がいいよね」というのと同じぐらい「原発ない方がいいよね」と思っている。でも昨年12月の総選挙の結果は逆だった。「問題はそんなに単純じゃない」という現実を民主主義というしすてむが見せつけた。
一般の人々はメディアや脱原発派があおり立てるほど原発について切迫感を持っていない。むしろ「安倍(晋三)さん、なんかやってくれそう」みたいな、ぼやっとした期待感のようなものの方が票になった。震災前と比べて原発への関心は高まり、意識も変わったが、社会を変える力にはなっていない。
だから原発は止まらないし、再稼働もされるだろう。不謹慎な言い方だが、もう一回どこかで原発が爆発でもしない限り、今夏の参院選後に再稼働の動きは加速すると思う。
最大の敗因
僕は「脱原発論はなぜ敗れ去ったのか」という研究を始めている。原発を止めたいというより自然エネルギーを普及させたい人が、脱原発を格好の口実に使ったから、社会運動をしたい人が脱原発デモを独占したから-。脱原発の敗因として、そんな点が挙げられる。
でも、最大の敗因は、原子力をめぐる本当の議論がこの国で成立していないことだ。福島の事故があって水面は波打っているように見えても、水の中では何も変わっていない。
実際、3・11後の各地の選挙で、脱原発派が推進派に勝ったケースはほとんどない。反原発デモなど新しいかたちの運動は社会を変えるきっかけになるかもしれないと期待したが、何も変えられていない。「電力会社が悪い」「原子力マネーにまみれた政治家が悪い」と、だれかに烙印を押し、排除するだけの旧態依然の社会運動にとどまっているからだ。
再稼働への反発が「燃料」となって、下火になった反原発デモは今後、一時的に勢いが増すかもしれない。でも燃料を使い果たしたらおしまい。チェルノブイリがあって、福島があっても同じことを繰り返そうとしている。
批判や糾弾ではなく、立場の違う者同士で徹底的に議論する必要がある。議論を通じて「原発やめよう」となるか「やっぱり原発必要だよね」となるかは僕には分からない。それでも、ただ何かを批判したり、自分の主張を大声で人に強要するような社会のあり方ではダメだと思う。
僕の主張は脱原発派の人から「現状肯定的だ」と批判されることがある。でも、少なくとも僕は2年たっても10年たっても、原子力と社会の問題を考え続けている。福島の事故を決して忘れない。
報道も問題
報道にも問題がある。福島の被災者にとっては「危ない」「健康被害が出る」と繰り返しいわれても何の解決にもならない。「こんな線量が高い場所があった」「手抜き除染が発覚した」といったスクープ主義的な報道も目立つが、じゃあどうすればいいの、という議論が少なすぎる。
原発が止まらないのは結局、まっとうな議論が成立していないからだ。原発を止めたいと考えている人は、単純で分かりやすい「敵」や「悲劇」をはじめから規定し、排除すれば社会が変わると思いこんでいる。「単純じゃない問題」を、深く問おうとしない姿勢にこそ原因がある。まずは、その姿勢を変えないといけない。
2012.2.15
以上、全文掲載。
開沼さんは28歳。私よりも10も若い社会学者の言葉は、核心をついていると思います。
メディアが作りたがる「善と悪」「こちらとあちら」という構図を問い直し、「単純じゃない問題」をめんどくさいといって回避せず、知らん顔せず、すぐに解決出来なくても抱えながら、寄り添いながら、目を背けずに、付き合っていく。
なぜなら、この問題はどこか他所のことではなくて我々自身の内側にあるのだから。
私はそう捉えます。
いま読んでいる本にも開沼さんの文章がありますが、彼の論考をもう少し読んでみたくなりました。
大工・地域住民 齊田綾
by aya-saita
| 2013-02-15 22:17
| 震災がれきと原発
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