2012年 06月 28日
大工(職人)がいなくなる日 |
ある日の3時休憩の会話。
私(37歳)と、もう一人の大工Nさん(50代)と、薪ストーブ屋さん(40歳)の3人で、現場の話になった。
「足場屋はあんちゃん(兄ちゃん)ばっかりだ」という話から、「現場で若い大工に会わない」という話になった。
50代の大工さん曰わく、「現場で俺が(大工の中で)一番若いことなんてざらにある」と。
そうかもしれない。
私は基本的に下請けには入らないので、他所の大工さんと一緒になることが少ない。
でも、他の職方さん達(左官・設備・板金など)は、いろんな現場に出入りしているので、いろんな大工を知っている。
そういった職人に聴いても、やはり若い大工がいないという。
以下、会話を若干脚色して再現。
いつもより、重たい話題の休憩時間でした。
ただこれは、ホントの話です。
このままだと、技術を持った大工はいなくなります。
なぜなら、そういう仕事がほとんど無いから。
なぜ、そういう仕事が無いのか?
技術を要する仕事は手間がかかって、値段が高く付くから。
そういう大工手間よりも、きれいなシステムキッチンや高性能の設備のある家を、お客さんが選ぶから。
「顧客に必要とされない物は淘汰される。それは市場原理だから当たり前」というのも理屈。
ただ、少し考えてみましょう。 きちんとした技術は誰のためにあるのかということを。
それは、大工自身のためでもあるし、もちろんお客さんのためでもあります。
でも、それだけじゃない。
今、ここにいない人達、つまり我々の子供達の持ちうる権利でもあるのです。
市場原理を適用し、今必要がないからといって一度無くしてしまえば元には戻りません。
後世に残るような建物を建て、また、現在ある建物をきちんと後世に残すために、必要なのが大工技術です。
もとい、技術を持った大工が必要なんです。
これは、個人的には医療や教育と似ていると思っています。
我々大工の持っている技術は、その地域で生きています。生かされています。
生かすも殺すも地域の人々、そう、あなた次第です。 なんて。
どうだい、たまにはビシッと言うぜぇ~
ワイルドだろ~
大工・Gジャンは持ってない 齊田綾
私(37歳)と、もう一人の大工Nさん(50代)と、薪ストーブ屋さん(40歳)の3人で、現場の話になった。
「足場屋はあんちゃん(兄ちゃん)ばっかりだ」という話から、「現場で若い大工に会わない」という話になった。
50代の大工さん曰わく、「現場で俺が(大工の中で)一番若いことなんてざらにある」と。
そうかもしれない。
私は基本的に下請けには入らないので、他所の大工さんと一緒になることが少ない。
でも、他の職方さん達(左官・設備・板金など)は、いろんな現場に出入りしているので、いろんな大工を知っている。
そういった職人に聴いても、やはり若い大工がいないという。
以下、会話を若干脚色して再現。
薪 「なんでだべ」
N 「そりゃ、稼げないからだべさ」
薪 「確かに。昔は現場に出れば手っ取り早く稼げたからね」
私 「それに、今、大工になろうっても、取ってくれるとこ少ないんじゃない?」
薪・大工 「確かに。」
薪 「若い子を育てるような余裕は無いよね、実際。」
私 「うん、無いわ。全然無い。それに、育てようなんて思ってる人も少ないし」
薪 「だけど、あと10年したら、大工足りなくなるよ。」
N 「いや、10年もしないよ。あと5年で半分くらいになるんじゃない。」
私 「確かに、今60~65くらいの大工、多いもんね。」
薪 「そしたら、誰が家を建てるの?」
私 「建てるだけなら、建つんじゃない。プレカット、大壁ならたいして技術なんていらないしょ。大工っぽい人連れてくれば形にはなるよ、とりあえず」
N 「まぁ、今の人は和室も作らないし。 そういえば俺もここ最近作ってないわ、和室。」
私 「たしかに、作っても大壁和室っていうか、ただ畳敷きの洋間っていうか・・・、そういうの多いよね。」
薪 「そういや、うちにも和室って無いわ。」
私 「ま、和室だけでないけど、階段もプレカットが多いしょ、今は」
N 「そだ、ほとんどプレカットだわ、今は」
薪 「なしてよ? 大工が階段掛けないでどうすんのさ?」
N 「だって、そんな手間つかないから。高くなるべさ、俺等作ったら。」
薪 「そういう問題?」
私 「確かに、大工手間を削る事考えたら、そうなるって。」
薪 「でも、あれじゃない? 増改築なんかも大変じゃないの?」
N 「そだ。 直す方が大変だわ。 昔の家を直せる人がいなくなる。」
私 「確かに。 っていうか、もうだいぶ少ないと思うけど。」
薪 「大工さんって、良い仕事なのにね。」
N 「でも、昔に比べたら良い仕事も無くなったって。墨付けもなければ和室も階段もないから。 ま、楽だけど。」
私 「墨付けしなくて、刻みもなくて、和室も階段もなかったら、大工じゃなくてもいいっしょ。」
薪 「じゃ、今の大工って何なの?」
N 「大工は大工だべさ。」
私 「大工っていうか、木工事の作業員って感じじゃない?」
薪 「なるほど。で、どう違うの?」
N 「一人で全部できるかどうかじゃない?」
薪 「全部って?」
私 「墨付け刻みから造作まで」
N 「そうそう。」
薪 「それって大工ならみんな出来るんじゃないの?」
N・私 「いやいや、みんなじゃないでしょ。だって、今の大工なんて刻んだこと無い人ばっかりだよ。」
薪 「齊田さんは?」
私 「俺はわざわざ刻めるところに行ったから。」
薪 「じゃ、刻めなくても別に良いって事?」
私 「良いかどうか分かんないけど、道具は使えなくなると思う。」
N 「確かに、鉋引っ張るようなことも無くなるし。鑿もそれなりでいいしな。」
薪 「でも、結局最後はお客さんが困るよね、大工さんいなくなったら」
N 「そう思う。」
私 「でも、お客さんがそう思ってないからしょうがないっしょ。」
薪・N 「・・・・・・・・」
薪 「いや、お客さんは知らないんじゃない、そういうこと。」
私 「うん、わかってないと思う。でも、予算に負けて結局そういう家を頼んでるんだから、選んでるのはお客さんだよ。大工手間を掛けるより、きれいな設備が欲しいんだもん、結局。」
N 「そうなんだよね。」
私 「合い見積もり取って安いところにやらせてれば、必ずこうなるんだよ。最初っからわかってる。」
薪 「そうだよね、確かに。それにしても、あと10年したら、どうなるんだろう」
N 「大変なことになるわ、きっと。」
私 「うん、多分ね。」
いつもより、重たい話題の休憩時間でした。
ただこれは、ホントの話です。
このままだと、技術を持った大工はいなくなります。
なぜなら、そういう仕事がほとんど無いから。
なぜ、そういう仕事が無いのか?
技術を要する仕事は手間がかかって、値段が高く付くから。
そういう大工手間よりも、きれいなシステムキッチンや高性能の設備のある家を、お客さんが選ぶから。
「顧客に必要とされない物は淘汰される。それは市場原理だから当たり前」というのも理屈。
ただ、少し考えてみましょう。 きちんとした技術は誰のためにあるのかということを。
それは、大工自身のためでもあるし、もちろんお客さんのためでもあります。
でも、それだけじゃない。
今、ここにいない人達、つまり我々の子供達の持ちうる権利でもあるのです。
市場原理を適用し、今必要がないからといって一度無くしてしまえば元には戻りません。
後世に残るような建物を建て、また、現在ある建物をきちんと後世に残すために、必要なのが大工技術です。
もとい、技術を持った大工が必要なんです。
これは、個人的には医療や教育と似ていると思っています。
我々大工の持っている技術は、その地域で生きています。生かされています。
生かすも殺すも地域の人々、そう、あなた次第です。 なんて。
どうだい、たまにはビシッと言うぜぇ~
ワイルドだろ~
大工・Gジャンは持ってない 齊田綾
by aya-saita
| 2012-06-28 21:07
| 家まもり
|
Comments(4)
初めまして、
そのとうりであります、、
世の中にもどき大工がはびこって 本物の出番は無くなりました~^吾輩なんぞ 生きていけんので、、ペンキも塗って生活の足しにしちょります~~
そのとうりであります、、
世の中にもどき大工がはびこって 本物の出番は無くなりました~^吾輩なんぞ 生きていけんので、、ペンキも塗って生活の足しにしちょります~~
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aya-saita at 2015-10-08 08:30
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関西大工
at 2016-05-04 00:24
x
共感はできますが…
時代的な物で仕方がないでしょ!墨付け刻み全て自分でする仕事をみんな取ってこれるわけでもなく
墨付け刻みできるけど、その仕事取ってこれないからって
ハウスメーカーの下請けにはいる大工さんが山ほどいると思いますよ。技術が認められみんな単価良く
工期も長くそれが1番ですけど
現実は工期にケツ煽られ単価も低いのが現実だと
なにが悪いって全て時代!!
大工も今の時代についていけない人は
今の時代では大工では無いという考えもできます。
時代的な物で仕方がないでしょ!墨付け刻み全て自分でする仕事をみんな取ってこれるわけでもなく
墨付け刻みできるけど、その仕事取ってこれないからって
ハウスメーカーの下請けにはいる大工さんが山ほどいると思いますよ。技術が認められみんな単価良く
工期も長くそれが1番ですけど
現実は工期にケツ煽られ単価も低いのが現実だと
なにが悪いって全て時代!!
大工も今の時代についていけない人は
今の時代では大工では無いという考えもできます。
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aya-saita at 2016-05-04 17:17
関西大工様
はじめまして。
3年以上も前の記事にコメントしていただき、ありがとうございます。
「時代が悪い」「時代についていけない人は大工では無い」という考えを否定はしません。
わたしもいつもいつも良い仕事をしているわけではありませんが、こんな「時代」の中で何とか「次の時代に残る仕事をしたい」と考えています。
もちろん、儲かりませんよ。
ただ、やっていけないわけでもない。
こうして仕事仲間や施主さんに恵まれて続けていられるのは本当にありがたいことです。
これからも諦めることなく、できる事をチマチマきっちりと続けていきたいと思っております。
大工 齊田綾
はじめまして。
3年以上も前の記事にコメントしていただき、ありがとうございます。
「時代が悪い」「時代についていけない人は大工では無い」という考えを否定はしません。
わたしもいつもいつも良い仕事をしているわけではありませんが、こんな「時代」の中で何とか「次の時代に残る仕事をしたい」と考えています。
もちろん、儲かりませんよ。
ただ、やっていけないわけでもない。
こうして仕事仲間や施主さんに恵まれて続けていられるのは本当にありがたいことです。
これからも諦めることなく、できる事をチマチマきっちりと続けていきたいと思っております。
大工 齊田綾